
ほうれん草は、下茹でせずにそのまま調理することもできます。ただ、えぐみが気になる場合や、シュウ酸を減らしたい場合は、茹でて湯を捨てる方法が効果的です。
この記事では、なぜ下茹でをするのかを整理したうえで、湯の量や塩、茹で時間、冷水へのさらし方、炒め物や味噌汁で下茹でを省ける場面について説明します。
下茹でで減らしたいのは「えぐみ」と「シュウ酸」
ほうれん草を茹でるいちばんの目的は、えぐみを和らげることです。えぐみのもとのひとつがシュウ酸という成分で、水に溶けやすい性質があります。そのため、茹でると湯のほうへ出ていき、水にさらすことでもさらに減らせます。調べてみたら、ほうれん草のえぐ味はシュウ酸が原因のひとつで、茹でる、水にさらすという調理で減らせると説明されていました。
ここで、似ているようで違う感覚を分けておきます。
- えぐみ:舌やのどにひっかかるような、あと味に残る感じ
- 苦味:ほうれん草そのものが持つ、ほろ苦い味
- 歯がきしむ感じ:食べたあと、歯の表面がキシキシするような感覚
茹でて湯を捨てる方法が主に狙っているのは、えぐみやシュウ酸のほうです。苦味や歯のきしみは、茹でればすべて消える、というものではありません。「何が気になるのか」を分けて考えると、どう調理するか決めやすくなります。
ほうれん草の茹で方
私の茹で方の流れは次のとおりです。
- 株を切らずに、全体が入りやすい大きさの鍋を選ぶ。
- 沈みやすい量の湯を沸かして、塩を入れる。
- 株の根元から先に入れる。
- 全体が沈んだら火を止めて、1分ほど待つ。
- 湯から上げて、流水で1分ほどかけて冷ます。
- 水気を絞ってから切る。
湯の量はたっぷりめ
お湯の量まで何リットルとは決めていません。目安は、ほうれん草を入れたときにぎゅうぎゅうにならず、ゆらゆらと動けるくらいです。窮屈な鍋だと湯の温度が下がり、お湯に出ていくものも出にくくなります。シュウ酸はお湯に溶け出すので、湯量は少なすぎるより多めのほうが向いています。湯量が多いほどシュウ酸が減りやすかったという報告もあります。
塩は湯量の1%を目安に
これまでは湯量の0.5%くらい(2リットルなら10g)入れている感覚でした。先日、湯2,400mlに塩24g(1%)で茹でてみたところ、入れるときは「かなり多いな」と感じましたが、塩辛くはなりませんでした。茹で上がりも0.5%のときと変わらない印象でしたので、これからは1%を目安にしても大丈夫だと思っています。

茹で時間は何分?
調べた資料では、「沸騰した湯に根元から入れ、1分ほど茹でて流水にさらす」とされています。長く茹でるほどシュウ酸は減りやすい一方で、ビタミンCなど水に溶けやすい栄養も減ります。茹で時間は、えぐみをどこまで減らしたいかと、食感や栄養をどこまで残したいかの兼ね合いで決めることになります。
私の場合は、お湯に全体が沈んだら火を止めて、1分ほどで上げています。シャキシャキした食感を残したいからです。ここまでで止めておくと、お浸しではシャキッとして、炒め物にしても火が入りすぎずペタペタしません。ただ、火を止める分、しっかり沸騰させて茹でるよりは、えぐみを減らす力は控えめになるかもしれません。えぐみが気になる人は、沸騰した湯のままで少し長めに茹でてみてください。
冷水にさらす時間は1分ほど
鍋やボウルの中で水を流しながら、手でゆらゆらさせて温度を確かめつつ冷まします。細い水を出しっぱなしにして置いておくことはしません。ビタミンC、カリウム、葉酸は水に溶けやすい栄養なので、冷めたら早めに上げるようにしています。

絞ってから切る
絞ってから切ると、水っぽくならず切りやすくなります。切る前に株の根元を拾って揃えておくと、包丁が入れやすいです。お浸しにも炒め物にも、この状態から使えます。
炒め物は下茹でなしでも大丈夫?
結論は、「必ず茹でるのが正解ではない」です。
一袋まるごと茹でておけば、お浸しにも炒め物にも使い回せます。でも、1〜2人前だけ使いたいときは、茹で置きしておくほうが面倒です。そういうときは、生のまま炒めています。多少えぐみがあってもいい、という日はそれで十分です。気になるなら、茹でてから炒めれば大丈夫です。
茹でてから炒めるなら、先ほどのように短めに茹でておくと、炒めたときに火が入りすぎず、ペタペタしません。お浸しにも炒め物にも向く、ちょうどいい固さで止めておくイメージです。
選び方の目安は、次のとおりです。
- えぐみが気になる、シュウ酸を減らしたい:茹でて湯を捨ててから使う
- 手軽さを優先したい、少量だけ使いたい:生のまま炒める
- シャキッとした食感が好き:さっと短めに茹でて、水にさらす
味噌汁に入れるときは
味噌汁も、生のまま入れてかまいません。私も少量だけ使いたいときは、茹でずにそのまま味噌汁に入れています。
ただ、汁物は汁ごと飲むものです。茹でるとシュウ酸が湯に出ていくのと同じように、生のまま煮ると、水に溶けやすい成分は汁のほうに出ていきます。えぐみが気になる人は、先に茹でて、絞ってから入れたほうが安心です。
電子レンジ加熱は、茹でるのと同じではない
電子レンジは、手軽に火を通せるのが利点です。ただ、シュウ酸を湯に出して捨てるという目的では、茹でるのと同じ働きにはなりません。電子レンジで加熱し、そのあと水にさらしたほうれん草を調べたある研究発表では、えぐみに関わる遊離型のシュウ酸はほとんど減らなかったと報告されています。火を通すことと、アク抜きは別のことだと考えておくとよさそうです。
茹でても苦いときは
茹でたのに苦い、ということもあります。茹で時間が足りなかったのか、湯の量が少なかったのか、水にさらしたのがうまくいかなかったのか、それとも素材そのものなのか、はっきりしないことも多いです。シュウ酸の量は季節や品種でも差が出るといわれていて、毎回同じ茹で方でも、同じ仕上がりになるとは限りません。
そんなときは、次の順で考えてみてください。
- 次は、湯を少し多めにして、茹で時間も少し長くしてみる。
- 冷水にさらしすぎず、手早く上げる。
- それでも気になる日は、胡麻和えや炒め物など、味のはっきりした料理に回す。
サラダ用ほうれん草について
サラダ用のほうれん草は、一般にシュウ酸が少ない品種や栽培方法のものが使われています。生で食べることを前提にしているので、普通のほうれん草よりえぐみが少ないのが特徴です。ただ、「ゼロ」とは限りません。気になる人は、少量から試すか、さっと湯をくぐらせてみてください。
まとめ
ほうれん草を茹でる目的は、えぐみを減らし、シュウ酸を湯に出すことです。炒め物や味噌汁でも、茹でなくて作れます。えぐみが気になる日は茹でる、手軽さを優先したい日は生のまま、と使い分けてかまいません。食感を残したい人は短めに、えぐみを減らしたい人は少し長めに、と好みで調整してみてください。
参考
農研機構「今が旬の「ほうれんそう」のお話」 / 加熱とシュウ酸に関する研究(Food Science and Technology Research 24巻3号) / 電子レンジ加熱と水さらしに関する研究発表(日本調理科学会)

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