
冷凍で売られている冷凍ほうれん草は、生のほうれん草と同じように扱っていいのでしょうか。下茹でやアク抜きは必要なのか、解凍してから使うのか、凍ったまま入れていいのか。袋を開ける前に、迷ったことはありませんか。
この記事では、冷凍ほうれん草の袋の見方と、料理ごとの使い方、水っぽさやえぐみが気になるときの対策を、公的な資料や研究、私の体験をもとにまとめました。レシピを作る前に必要な判断と下処理を、先に整理しておきたいと思います。
冷凍ほうれん草は、生とは別ものと思って使う
結論から言うと、冷凍ほうれん草は生のほうれん草とは別の食材と考えて、袋の表示どおりに使うのがおすすめです。
市販の冷凍野菜の多くは、凍らせる前に軽く熱を通してあります。これを「ブランチング」といいます。業界団体の説明では、ほとんどの冷凍野菜は、急速に凍らせる前に熱湯や蒸気で、調理するときの加熱の7〜8割ほどまで火を通してあり、ほうれん草なら1分から1分半の過熱だそうです。酵素の働きを止めて、保存中の変色や変質を防ぐためのようです。
つまり冷凍ほうれん草は、下ごしらえの一部が済んだ状態に近い食材です。ただし、調理としての完全な加熱ではありません。シュウ酸については、あとの「えぐみとシュウ酸は?」で触れます。
使う前に決めること
使う前に決めることは三つあります。まず、袋の表示で、加熱が必要な商品かどうかを確認します。次に、料理に合わせて、凍ったまま使うか、解凍してから使うかを決めます。そして、解凍したら水気をしっかり絞ります。えぐみやシュウ酸が気になるときは、解凍後に流水でさらす方法もあります。
「解凍」と「加熱調理」は別のことです。解凍しただけで食べられるのか、加熱が必要なのか。ここを分けて考えると、迷いにくくなります。
まず見るのは、袋の裏の「加熱調理の必要性」
そのまま食べられるのか、加熱が必要なのかは、袋の裏の表示で決まります。原材料や賞味期限の近くにある「加熱調理の必要性」の欄に、「加熱してお召し上がりください」とあれば加熱が必要です。「解凍してそのままお召し上がりいただけます」などとあれば、加熱せずに食べられる商品です。
紛らわしいのが、すぐ近くの「凍結前加熱の有無」の欄です。冷凍野菜の多くは、ここが「加熱してありません」となっています。ブランチングをしていないように見えますが、そうではありません。業界団体のコラムによると、色や鮮度を保つための前処理の加熱はしてあっても、調理としての完全な加熱ではないため、こう表示されるそうです。この欄の表示にかかわらず、食べるときは、パッケージに書かれた調理方法に従うよう説明されています。
自然解凍や水中解凍ができる商品には、その旨が書かれています。書いていない商品は、表示どおりに加熱してください。表示が見つからないときも、加熱して使うほうが安心です。
迷ったら「加熱調理の必要性」と調理方法の欄を見る、と覚えておくと分かりやすいと思います。

同じ冷凍ほうれん草でも、商品によって違う
大手メーカーの業務用の商品一覧を見ると、同じ「5cmほどにカットしたバラ凍結のほうれん草」でも、「加熱調理は必要ありません」と書かれた商品と、「加熱して召し上がってください」と書かれた商品がありました。見た目が似ていても、加熱の程度や扱い方は商品ごとに違うようです。
凍らせ方にも違いがあります。必要な分だけ取り出せるパラパラの「バラ凍結(IQF)」と、塊のまま凍らせる「ブロック凍結(BQF)」です。塊のタイプには、表面に薄い氷の膜(グレーズ)がついているものもあります。ある研究では、塊で凍らせた1kg入りの冷凍ほうれん草3商品で、解凍すると平均約200gの溶けた水が出ていました。
私は以前、業務用の大きな袋に入った、塊で凍っているタイプを使ったことがあります。袋には「BQF」と書いてありました。溶かすと袋の中に水がたまるほど出てきて、茎は茹でても藁を食べているような食感が残り、包丁でも切りにくかったです。ただ、これは私が使ったその商品での話で、すべての業務用がそうだとは思いません。スーパーで買える家庭用の小さな袋は、使いやすい状態のものが多い印象です。
料理別:凍ったまま使うか、解凍するか
味噌汁やスープ、スパゲティ、炒め物など、加熱する料理は、凍ったまま入れても良いかもしれません。「加熱してお召し上がりください」と書かれた商品は、袋に書かれた調理方法を優先して、中心までしっかり火を通してください。味噌汁やスープなら煮立った汁の中で、炒め物なら全体が熱くなるまで加熱します。
一方、「そのまま食べられる」と表示された商品は、もともと食べられる状態なので、加熱しすぎると色も食感も落ちやすくなります。業界団体も、解凍して調理するときは加熱しすぎないよう注意が必要としています。こちらは、最後に加えて軽く温める程度でも大丈夫です。
私も、冷凍ほうれん草を凍ったまま、スパゲティや味噌汁に使ったことがあります。だいぶ前のことですが、水っぽさやえぐみ、食感で気になったことは一切ありませんでした。
おひたしや和え物のように、そのまま食べる料理は、解凍して水気を絞って使います。ただし、これができるのは「そのまま食べられる」と表示された商品だけです。「加熱して」と書かれた商品は、表示どおりに加熱し、冷ましてから絞ってください。
水っぽくなるのはなぜ?水切りのコツ
解凍すると水が出てくるのは、冷凍で野菜の細胞が壊れて、中の水分が出やすくなるためです。塊で凍らせたタイプでは、表面の氷が溶けて水になっている場合もあると考えられます。どちらも、出てきた水は捨てて、水気をしっかり絞ってから使うのが基本です。
絞り方は、ほうれん草は一束で何人分?の記事で、私のやり方を紹介しています。私はほうれん草を潰さないように優しく絞っているので、時間がたつと多少にじんでくることがあります。水気は食材の痛みの原因にもなりますので、出た水はまた絞りなおすか、早めに食べきりましょう。作り置きやお弁当に入れるときは、使う直前にもう一度、軽く絞ると安心です。
凍ったまま味噌汁やスープに入れる場合は、出てくる水分も汁の一部になるので、水っぽさは気にならないかもしれませんね。
冷凍ほうれん草にも、えぐみやシュウ酸はある?
答えは、「あります」。
冷凍ほうれん草にも、生のほうれん草と同じように、シュウ酸は含まれています。ブランチングで熱を通してあっても、シュウ酸がなくなるわけではありません。冷凍ほうれん草の解凍方法とシュウ酸の量を調べた、ある大学の研究でも、調べた3つの商品すべてからシュウ酸が検出されています。
では、生のほうれん草より多いのか、少ないのか。これは、この研究では比べていないので、分かりません。研究者は、ブランチングだけでは、家庭で茹でて水にさらすよりシュウ酸が残りやすいのではないかと考えていますが、この研究で確かめられたわけではありません。
また、シュウ酸があることと、えぐみを感じるかどうかは、別の話です。シュウ酸はえぐみのもとになる成分のひとつですが、感じ方は、商品や料理、人によっても違います。私の場合は、凍ったまま味噌汁やスパゲティに使って、えぐみが気になったことはありませんでした。
気になるときの方法も、その研究で調べられています。塊で凍らせた3商品を、自然解凍したものと、自然解凍のあとに流水に2分ほどさらして絞ったもので比べたところ、どの商品も、流水にさらしたほうがシュウ酸は少なくなりました。減り方には商品による差がありました。シュウ酸は水に溶けやすいため、解凍で出た水や流水に溶け出たのだろう、と研究者は推測しています。生のほうれん草を茹でて水にさらす理由(ほうれん草は下茹でなしでも大丈夫?)と、同じ考え方です。
ここで大切なのは、「流水でさらすと減った」ことと、「それで安全に食べられる」ことは、別の話だという点です。この研究が示したのは、解凍の方法による量の違いで、どこまで減らせば安全かという基準ではありません。調べられたのは塊タイプの3商品だけで、バラ凍結のタイプは調べられていません。また、流水にさらしてもシュウ酸がなくなるわけではなく、加熱の代わりにもなりません。「加熱して」と書かれた商品は、必ず加熱してください。
シュウ酸の摂り方について、医師や栄養士から指導を受けている方は、その指示を優先してください。気になる方が塊で凍ったタイプを使うときは、解凍して出た水を捨て、さっと流水にさらして絞る方法があります。長くさらすと水に溶けやすい栄養も流れてしまうので、さらしすぎないのがいいと思います。味噌汁やスープは、溶け出した分も汁ごといただくことになります。
食感は、生や茹でたてのほうれん草とは少し違います。冷凍と解凍で細胞が壊れてしまうので、やわらかくなるのは自然なことなのです。もしシャキシャキ感を楽しみたいようでしたら、生のほうれん草を茹でるほうがやはり向いていますね。栄養面では、旬に急速凍結した冷凍野菜は栄養が保たれやすい、と業界団体は説明しています。
自分で冷凍するなら
余ったほうれん草を自分で冷凍するなら、国の資料では、ほうれん草のように茹でてアク抜きをする野菜は、茹でてから冷凍するのがよいとされています。
私のやり方は、茹でて水にさらし、水気を絞ったものを、ラップを敷いた金属のバットにパラパラに置き、ラップをかぶせて冷凍します。できるだけ早く凍らせたいからです。凍ったら崩してジップロックなどに入れ、必要な分だけ使います。熱の伝わりやすい金属のトレーに薄く並べること、しっかり包むこと、早めに使い切ること(家庭の冷凍庫では2〜3週間が目安)は、国の資料や業界団体が紹介するコツとも重なっていました。
まとめ
冷凍で売られている冷凍ほうれん草は、生と同じではなく、下ごしらえの一部が済んだ別の食材です。迷ったら、袋の裏の「加熱調理の必要性」と調理方法を見て、表示どおりに使います。商品によって加熱の要否や凍らせ方が違うので、「冷凍ほうれん草はこうだ」と決めつけないのがいちばんです。
「加熱して」と書かれた商品は、凍ったままでも解凍してからでも、しっかり加熱します。「そのまま食べられる」商品なら、味噌汁や炒め物は凍ったまま、おひたしや和え物は解凍して絞ってから使います。出てきた水は捨てて、水気を絞ります。えぐみやシュウ酸が気になるときは、解凍後に流水でさっとさらす方法もありますが、安全を保証するものではなく、加熱の代わりにもなりません。
参考

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