
先に結論
蒸したあとに固まっていなかったら、もう一度お鍋を沸騰させてから弱火で加熱してみてください。 5分くらいずつ様子を見て、揺らしたときに全体がぷるんと動いて、竹串を刺して透明な汁が出れば、固まっています。
まだ蒸す前なら、だしが多すぎたと気づいたときに、卵を足して調整できます(計算のしかたは下に書きました)。
私の実験では、蒸したあとに卵を足すと、なめらかには直りませんでした。
レシピ通りに蒸したのに、固まらない
茶碗蒸しが固まらないとき、原因は大きく2つに分かれます。
- 加熱が足りない:配合は合っているのに、中心まで温度が上がっていない
- 固まりにくい配合や具材:だしが多すぎる、固まりを邪魔する具材が入っている
この2つで、直し方が変わります。まず、今の状態を見てみましょう。
| 今の状態 | 考えられること |
|---|---|
| 全体が液体 | 加熱がかなり足りない、または配合がかなり薄い |
| 表面は固まったが、中心がゆるい | 加熱不足の可能性が高い |
| 固まっているのに、汁が出る・ぼこぼこしている | 加熱しすぎ(「す」が入った)の可能性 |
あくまで目安ですが、ここを見分けると、次に何をすればいいかが見えてきます。
私が茶碗蒸しで冷や汗をかいた話
以前、大量調理の現場で茶碗蒸しを作ったときのことです。50人分ほどの量でした。
スチコンにかける前に、だし汁と卵の配分を間違えたことに気づきました。時間はないし、頭はテンパっていて、細かい計算なんてできません。そこで、計算通りではなく、感覚で卵を足しました。出たとこ勝負で10個です。結果は、なんとかセーフでした。
このとき助かったのは、「卵1:だし3」という割合を覚えていたからです。目安を知っていたので、「配分がおかしい」と蒸す前に気づけました。
蒸す前に気づけたなら、卵を足して調整できます。 計算の仕方は、次の章で紹介します。
まず確認したい、卵とだしの割合
茶碗蒸しの基本は、卵1:だし3(体積と重さをほぼ同じとみて)です。卵液全体に占める卵の割合は、約25%になります。
ある研究でも、好まれる茶碗蒸しの卵液の濃度は約25%とされています。※1
卵1個を約50gとして、だしの量を決める式はこうです。
- 卵が1個(50g)なら、だしは約150ml
- 卵が2個(100g)なら、だしは約300ml
蒸す前に、だしが多すぎたと気づいたときは、次の式で足す卵を計算できます。
足す卵(g) = だしの量(ml) ÷ 3 - いま入っている卵(g)
例:卵1個(50g)に、だし250mlを入れてしまった場合。250 ÷ 3 ≒ 83gなので、足す卵は約33g(卵の約2/3個)です。
なお、だしには調味料も含めて考えます。味付けしただし汁の量で計算してください。

なぜ卵は固まるの?温度と塩の話
卵のたんぱく質は、熱が入ると固まります。茶碗蒸しの固まり方を調べた研究では、こんなことが分かっています。※2
- 卵液が固まり始める温度は約77℃
- 温度が上がるほど硬くなり、90℃くらいまで硬さが増す
- 急に温めると、固まり始めが遅れる。でも、最終的に中心が90℃まで上がれば、仕上がりの差は小さくなる
- 塩分が0.6%から1.2%に増えるほど硬くなる傾向があり、味の好みでは0.8%が好まれた
つまり、温度が足りなければ固まらないですし、塩分は固まり具合にも関わるということです。
ただ、これは実験室での話です。家庭の鍋や器だと、同じようにいかないこともあります。
実験:固まらなかった茶碗蒸しは、どう直る?
「蒸したあとに固まっていない」ときの直し方を、実際に試してみました。

超疲れた~クロちゃんがやれっていうから~超スパルター
条件
- 器:湯呑4つ(1つに約100ml)、アルミホイルで蓋
- 鍋:寸胴鍋に目皿(目皿が薄いので、耐熱皿を下に置いて底上げ)。蓋には、水滴が落ちないようキッチンペーパーを敷いた
- 鍋の中の温度:一度沸騰させてから弱火にして、温度計で約80℃強(湯呑を入れたとき80℃強、1分後も約80℃。丈のある寸胴鍋での結果)
- だし:水400mlに顆粒だし2.5g、濃口醤油6g、みりん6g、塩2.3g(卵液にしたとき、塩分約0.8%を目安に)
- A(卵1:だし3):卵50g+だし150ml
- B(卵1:だし5):卵50g+だし250ml



湯呑にA6・A12・B6・B12と書いて、4つ同時に蒸しはじめました。6分でA6とB6を取り出し、12分でA12とB12を取り出して確認。そのあと、直し方を試しています。

結果
| 湯呑 | 経過 | 結果 |
|---|---|---|
| A12(1:3) | 12分 | ストレートに固まった |
| A6(1:3) | 6分→追加6分 | 6分では液状。追加で計12分になって固まった |
| B12(1:5) | 12分 | 固まらなかった |
| B6(1:5) | 6分→追加6分→さらに5分 | 6分では液状。追加6分で緩く固まり、さらに5分でまあまあ固まった |
| B12(1:5) | 卵11gを足して混ぜ、5分→さらに5分 | 柔らかいが、ぼこぼこした仕上がり |









分かったこと
- 鍋の中が80℃前後だと、100mlの茶碗蒸しは6分では固まらず、12分ほどかかりました。レシピの時間は目安で、器の大きさや鍋の温度で変わります。
- 1:5の薄い卵液でも、追加で加熱を続けたら、緩くですが固まりました。
- 固まらなかった卵液に卵を足して蒸し直したものは、なめらかにならず、ぼこぼこしました。蒸したあとに足すのは、むずかしいようです。
ちなみに
1回だけ、私の鍋でやってみた結果なので、「これが正解!」というより「こうなりました」という記録として読んでください。
途中で足し湯をしたので、鍋の中の温度が少しぶれたかもしれません。同じ12分でも、B12は固まらず、いったん取り出して再加熱したB6は緩く固まりました。その理由は、私にもはっきり分かっていません。
固まらなかったときの直し方(私の結論)
- まず、弱火で追加加熱する:5分ずつ様子を見ます。揺らしたとき、全体がぷるんと動いて、竹串を刺して透明な汁が出れば、固まっています。
- 蒸す前に気づいたなら、卵を足して配合を直す:前の章の計算式を使います。
- 蒸したあとに卵を足すのは、最後の手段:今回の実験では、なめらかになりませんでした。
追加加熱するときは、中心まで十分に火を通してください。ただし、強火で長く蒸しすぎると、「す」が入ることがあります。
加熱方法による違い
家庭では、蒸し器やせいろのほか、湯を張った鍋やフライパンでも作れます。電子レンジやオーブン、スチームオーブンを使う方法もありますが、機種によって加熱の強さが違うので、レシピの指示に従って、短い時間ずつ様子を見るのが安全です。
どの方法でも、次のことに気をつけると失敗しにくくなります。
- 蓋にキッチンペーパーを敷くか、アルミホイルを器にかぶせて、水滴が落ちないようにする
- 蓋を少しずらして、蒸気の逃げ道を作る
- 火は、強火で一気に、ではなく、一度沸騰させてから弱火でじっくり。温度計がなくても、これで鍋の中は80℃くらいになりました(私の寸胴鍋の場合)。丈の低い鍋だと違うかもしれないので、蒸気がゆらゆら出る程度を目安にしてください
具材が原因のこともある
配合が合っていても、具材が固まりを邪魔することがあります。一般に、生の舞茸などには、たんぱく質を分解する酵素が含まれているといわれ、そのまま入れると固まりにくくなることがあります。舞茸を使いたいときは、あらかじめ加熱してから入れるのが定番です。(※この点は今回、私は試していません)
具材から出る水分でも、卵液は薄まります。具材の水気は、よく切っておきましょう。
まとめ:失敗しにくくするコツ
- 配合:卵1:だし3が基本(卵50gに、だし150ml)。調味料を含めた量で考える
- 器の大きさ:小さい器ほど早く固まる。レシピの時間は目安と考える
- 火加減:強火で一気に、ではなく、弱めの火でじっくり。蓋を少しずらして、蒸気の逃げ道を作る
- 確認の仕方:時間だけでなく、揺らしたときの様子と、竹串から出る汁の色で見る
- 固まらなかったら:まず追加加熱。蒸す前に配合ミスに気づいたら、卵を足して調整する
参考(本文の※の番号に対応)
※1 久塚智明・小川宣子・渡邊乾二「茶碗蒸しの物性に及ぼす影響因子の解析」日本調理科学会誌 32, 312–316, 1999
※2 久塚智明・小川宣子・渡邊乾二「茶碗蒸しの物性に及ぼす影響因子の解析(第2報)―ゲル化特性に及ぼす調理時の加熱条件、pHおよび食塩濃度の影響―」日本調理科学会誌 33(4), 451–455, 2000。固まり始める温度(約77℃)は、卵液の濃度25%、塩分0.6%、pH6.45の条件での結果です。

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