
きゅうりやキャベツに塩をすると、しばらくして水が出てきます。塩によって野菜の内側と外側に濃度差ができ、水分が外へ移動する「浸透圧」の働きによるものです。
ただ、塩もみは「塩をして水を出せばいい」というだけの作業ではありません。ポテトサラダ、浅漬け、餃子では、水分を出す目的も必要な塩の量も変わってきます。私は20年以上調理の仕事をしてきましたが、塩の量だけで決めるのではなく、料理・置く時間・最後の味見を組み合わせて調整しています。
この記事では、野菜から水が出る仕組みと、実際に私が行っている塩もみの方法を紹介します。
野菜を塩もみすると水が出るのはなぜ?
野菜に塩をまぶすと、表面の水分に塩が溶け、野菜の外側だけ塩分濃度が高くなります。この濃度差によって、野菜の細胞内の水分が外へ引き出されるのが、水が出てくる仕組みです。
公益財団法人塩事業センターでも、塩には脱水作用があり、濃度2%以上の食塩水は野菜から水分を引き出すと説明されています。水分が抜けた野菜はしんなりしてかさも減り、料理が水っぽくなるのを防ぎながら、後から加える味もなじみやすくなります。
塩もみの塩は野菜の重さの2%がひとつの目安
きちんと計る場合、塩の目安は野菜の重さの2%程度です。
野菜の重さ×0.02=塩の重さ
| 野菜の重さ | 塩2%の量 |
|---|---|
| 100g | 2g |
| 200g | 4g |
| 300g | 6g |
| 500g | 10g |
とはいえ、2%はどんな料理にも当てはまる正解ではありません。塩を洗い流すのか、そのまま使うのか、後から加える調味料があるかどうかで、ちょうどいい量は変わります。私自身は塩を計量せず、料理の用途に合わせて目分量で調整しています。
塩の量と置く時間は料理によって変える
どんぶり一杯の野菜を基準にした、私の目安は次のとおりです。
| 用途 | 塩の目安 | 置く時間 |
|---|---|---|
| ポテトサラダの野菜 | 小さじ1/2 | 約15分 |
| 浅漬け | 小さじ2/3 | 約10分 |
| 餃子のキャベツ | 小さじ1 | 約10分 |
実際にどんぶり一杯(約300g)で計算すると、塩の量は1〜2%程度に収まります。餃子のキャベツはしっかり水分を出したいので2%に近く、ポテトサラダや浅漬けはやや控えめです。
どんぶりの大きさや切り方で量は変わるので、厳密なレシピというより厨房で使っている感覚です。大切なのは塩の量そのものより、「何のために水分を出すのか」を先に考えることだと思っています。
ポテトサラダは塩を控えて時間で調整する
ポテトサラダのきゅうりなどは、しっかり水分を出しておかないと、時間がたって全体が水っぽくなります。一方で、後からマヨネーズを加えるため、塩を入れすぎると塩辛く仕上がってしまいます。そこで塩小さじ1/2程度に控え、代わりに約15分と少し長めに置いて調整しています。
ポテトサラダそのものが水っぽくなる原因は「ポテトサラダが水っぽい原因は『茹で方』でした」の記事でも詳しく紹介しています。
浅漬けは水を出してから味をつける
浅漬けは塩小さじ2/3程度で約10分置きます。水気を絞ったあと、酢と生姜、香りづけ程度の醤油などで改めて味をつけるのが私のやり方です。最初の塩は完成の味を決めるためというより、余分な水分を出すための下ごしらえにすぎません。
餃子のキャベツは水分をしっかり出す
餃子のキャベツは塩小さじ1程度とやや多めにし、約10分置いてしっかり水分を出します。水分が残りすぎると、ひき肉と混ぜたあとの餡が水っぽくなるためです。
刻んだキャベツに塩をして水分が出たら、ビニール袋に入れて袋の先に小さな穴を開け、破れないよう押しながら水分を出します。絞ったキャベツをひき肉と一緒にこねれば下ごしらえは完了です。
塩もみした野菜は洗う?洗わない?
洗うかどうかは、絞る前の味見で決めています。ポテトサラダの野菜は一枚食べてみて、しょっぱければさっと水に通してから絞り、そうでなければそのまま絞ります。浅漬けと餃子のキャベツは、基本的に洗わずそのまま絞っています。
塩や野菜の量は毎回まったく同じにはならないので、「必ず洗う」「絶対に洗わない」とルールを決めるより、絞る前に一つ食べて確かめる方が失敗しにくいと感じています。
野菜によって水が出る速さは違う
柔らかい野菜ほど、水が出るのが早いというのが私の感覚です。おおよその順番は次のとおりです。
- 春キャベツ
- かぶ
- 硬いキャベツ
- きゅうり
- 薄切りにした大根・白菜
- 少し厚めに切った大根
同じ大根でも、薄切りと厚切りでは水が出るまでの時間が変わります。野菜の種類だけでなく、硬さや切り方によっても左右されるため、時計だけを見るのではなく、しんなり具合や出てきた水の量を見ながら調整しています。
なお、塩で水分を出す場合とは反対に、千切りキャベツを水にさらすと水分を吸ってシャキッとします。水にさらす目的や栄養の流出については、キャベツの千切りは水にさらす?調理師がやっていた栄養を残す方法で詳しく説明しています。
塩を入れすぎたときの戻し方
塩もみで一番多い失敗は、塩の入れすぎです。しょっぱくなったときは、どんぶりに水を入れてこぼす作業を2〜3回繰り返し、一枚食べて確認してから絞ります。長時間水につけっぱなしにするのではなく、水を入れては捨てるのを何度か繰り返すのがコツです。
反対に水分が足りなければ、塩を足す前にもう少し時間を延ばして様子を見る方が安全です。
野菜の水分は料理に合わせて絞る
絞り方も料理ごとに変えています。ポテトサラダの野菜は手で持てる量に分けて数回に分けて絞り、浅漬けは手で絞るほか、どんぶりにうまくはまる落とし蓋のようなもので上から押さえることもあります。餃子のキャベツはビニール袋の先に小さな穴を開けて絞ると、刻んだキャベツが散らばらずまとまった量を処理できます。ただし強くひねりすぎると袋が破れるので注意が必要です。
水分を完全になくす必要がない料理もあります。水っぽさを防ぎたいのか、食感を残したいのかを考えながら、絞り加減を変えています。
まとめ
野菜を塩もみすると水が出るのは、塩によって野菜の内側と外側に濃度差ができ、浸透圧で水分が外へ移動するためです。塩の量を計る場合は野菜重量の2%が目安になりますが、実際の料理では用途と置く時間をセットで考える必要があります。
私が特に大切にしているのは、絞る前に一枚食べてみることです。薄ければもう少し置き、しょっぱければ水を入れてこぼして調整する。決められた時間だけに頼らず、最後に自分で確かめるのが一番失敗しにくい方法だと思っています。
塩水に漬けて濃度を調整したい場合は、塩水の濃度計算ツールもあわせてどうぞ。


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