ふらっと現れたスカウトマン
連日のMLB界隈のニュースで思い出した話なんです。
何年ごろのいつの季節のことかも忘れてしまいましたが、彼は印象に残っている通りすがりのお客さんのうちの一人です。
私のお店はほぼほぼ常連さんばかりなので一見のお客さんは珍しいのですが、近くにビジネスホテルが何軒もあるので、たまにふらっと知らない方が見えます。
小さい店なのでお一人様は皆さんカウンターに座ります。
ご注文の対応をしながら、他のお客さんとも話しながらこの一見さんにも気にかけて話しかけたりします。
「お客さんこの辺の方?どちらから来たの~」なんて当たり障りなく声をかけます。
お客さんも緊張がほぐれてきたら話の続きもしてくれます。
どこか悲しげな青年だった
この日のこのお客さんは、歳の頃30代前半のまだ若い青年でした。(おじさんが多い店なので若い!)
やっぱり仕事でこの辺を回っているそうで、北関東から中部地方を担当で回っているそうでした。
それで何の仕事をされているか聞いたら、なんと野球のスカウトマンとのこと。
初めまして。なかなか会うことのない職業の方です。
この青年も野球少年からプロを経験し、その後スカウトマンとして働くことになったそうです。
小学生、中学生くらいからセンスのある子を見つけるそうで、高校の時はもう本当に具体的な話になる。
どこの球団なのかミーハー心で聞くべきなのですが、話していてもやっぱり感じる悲しさ。
辛いのだそうです。
野球が大好きなセンスのある子の夢や希望を叶えてあげる手助けをする反面、それを諦めなければいけない現実も突き付ける。
高校卒業時点でドラフトに行けると思っている子に、ちょっと大学行ってくれるかと。
プロになるには今ではないからもう少し待ってくれ。
大学を卒業するころには方針外、戦力外。
応援している親御さんの期待もわかる。
誰もが幸せな結末にしてあげたいけど、それは不可能。
プロになって球界に入っても100人入ったら100人出ていく。
そういう大変な世界。
ものすごいピラッミッドと、目指している選手たちの沢山の思いがそこにあるのは素人でもわかった。
それでも一点見たい景色を目指していく
華やかそうに見える世界でも、そういうこともあるのだと教わりました。
彼は野球に対する思いが強かったから簡単には割り切れないし、思いの強い子の気持ちも分かるから裏切ることはしたくない。
そしてプロまで行った経験者で、夢半ばで選手を辞めたか聞いてないが、まだ球界に携わっている。
なんて人でしょう。すごい人です。
なかなか経験できない思いを抱えていらっしゃるが、きっと彼には克服できる山でしょう。
夢に破れた少年たちも、全力で応援していた親御さんたちも、いつかは乗り越えてそれでもやっぱり野球ファンでいてくれてますよ。
だからみんなの分まで野球の頂点を盛り上げていく景色を目指して頑張って欲しい。
あの頃はそんなエールは言えなかったけどね。
彼ももう今はおじさんになったかな。
いろいろな世界があります
野球業界に関わらず、いろんなスポーツ、団体、会社、プロジェクト等みんな同じことがありますね。
外からは全体しか見えませんが、そこに携わっているたくさんの関係者の仕事、その内容、思い、大変さ。
みんな知っている、みんな味わっている。
だからスポーツの世界に投影して見て、感じて泣いて、我が事のように応援します。
そして、こうも思います。
ピラミッドの頂点にいる者よ、忘れてくれるなと。
君が上へ上る途中で置いてきた者たちは今も君を見ているのです。
見たかった景色を見ている君がどんななのかを。